成功している企業の知的財産権の活用方法

リソースの活用

 

こんにちは。アイネクスト特許事務所の代表の弁理士・工学博士の津田です。
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事業を拡大していく中で、特許や商標登録を取ろうと考えることがあると思います。

しかし、これらの知的財産権は、ただ取得すれば良いという訳ではありません。

ほとんどの場合、知的財産権それ自体は、何ら利益を生まないからです。

 

知的財産権は、ビジネスにおいて〝手段〟として活用されて初めて、会社に利益をもたらします。

成功している企業は、そこを明確に意識して、知的財産権を取得しています。

 

このページでは、いつのタイミングで、何に対して特許を取るべきか、特許のほかにはどうやって会社を守る方法があるのかなどについて、詳しくご説明いたします。

 

アイデアのコンセプトを特許にする

 

アイデアが製品段階になって、初めて特許を取得しようとする方も多いです。

しかし、製品レベルでそのまま特許を取得してしまうと、競合はその特許の部分だけを避けて、似たような製品をつくることもできてしまいます。

そうならないためには、その製品の特徴をより概念的・抽象的にして、アイデアのコンセプトとして特許を取得することが必要です。

 

コンセプトの特許は、何十件分の特許にも匹敵します。

アイデアを製品レベルにまで落とし込んでしまうと、コンセプトがなかなか見えにくくなります。

そのため、特許の担当者が開発の初期段階から関わることで、コンセプトを正確にかつ迅速に特許化できるようになります。

また、コンセプトで特許を取得しておけば、技術の強みを活かして事業を横展開する場合にも役立ちます。

 

あえて特許を取得しない

 

コンセプトを製品化するためには、特別な技術(ノウハウ)が必要ですが、ノウハウの特許出願をする場合は気をつけるべきです。

ノウハウは、会社にとって重要な技術ではありますが、特許になりにくいという面があります。

 

また、特許には出願公開制度(特許法第64条)という規定があるため、特許を取得するのと引き換えに、その特許技術が他人に公開されてしまいます。

特許を出願すると、じきにその技術も公開されてしまうことで、ノウハウの特許が取れないばかりか、真似される材料を公開することになります。これでは踏んだり蹴ったりです。

 

こういったことを踏まえて、ノウハウについては特許を取得しない方もいます。

 

私自身も、技術をブラックボックスにしたまま商品化できれば、あえて特許をとる必要はないと考えています。

逆に、技術のブラックボックス化が不可能な場合には、特許を取得することを検討した方がよいでしょう。

 

取得する権利をTPOで選ぶ

 

知的財産権には、いくつかの種類があります。

特許権・実用新案権でアイデアを守り、商標権で会社名、商品・サービス名を守り、意匠権でデザインを守るのが原則です。

原則はありますが、それにとらわれず、状況に応じて取得する権利を選ぶことも重要です。

 

早く登録して競合に軽くけん制をかけておきたいのであれば、特許権よりも早く登録される実用新案権を選びます。

 

B to Cの商品・サービスであれば、その名称は真似されやすいので商標権で保護します。

反対に、B to Bであれば、顧客は名称よりも商品・サービスの内容そのもので判断するので、商標権で保護することにあまリ意味はありません。

 

機能的にもデザイン的にも優れているものであれば、取得するのは特許権でも意匠権でもかまいません。

意匠権の場合、登録されるのが商品の外観なので、真似していることがわかりやすく他者を排除しやすいという特徴があり、意匠権を積極的に利用することを意識しておくのも一つの方法です。

 

例えば、ロングセラーの『雪見だいふく』について見てみると、「雪見だいふく」という名前は当然商標登録していますし(商標登録第1742355号等)、さらに特許も取得しています(特許第4315607号)。

このように、複合的に合わせ技で守ることも大切です。

 

知的財産権を経営にリンクさせる

 

知的財産権で成功している企業は、経営と知的財産権とを結びつけています。

その反対は、知的財産権の取得にお金をかけてはいるけれど、それが経営に反映できていない企業です。

 

経営と知的財産権とを結びつけ、知的財産権を活用し、会社の利益に繋げるためには、まず知的財産権の性格や活用方法をたくさん知っておく方が有利です。

そうすることで経営上のリスクや課題点を知的財産権で効果的に解決できるようになり、結果的に会社の利益に結びつけることができます。

 

だからといって会社の利益がすぐに目に見える形で現れるわけではありません。

最近利益が出始めた――知的財産権を適切に活用できているからだろうか、といったような漠然とした感じです。

それなのに大企業が知的財産権に頼る理由は、知的財産権を活用することが会社の利益に貢献するということを多く経験しているからです。

 

中小企業でも、最初から利益が上がることを期待せずに、地道に知的財産権とつきあっていく必要があります。

 

ビジネスモデルを特許で保護している

 

特許の話の中でビジネスモデルの話をすると、「ビジネスモデル特許の売買等」をイメージされるのではないでしょうか。

ここで扱うのは、「ビジネスモデル特許」ではなく、「ビジネスモデル」そのものの保護です。

 

この世の中で、ビジネスモデルはさまざまな定義をされています。

私自身は、製造から販売までの流れにおいて、どこでどのようにして利益を得るのか、どこでマネタイズ(お金を創り出すか)するのかを明確にしたのが「ビジネスモデル」と考えています。

 

ビジネスモデルの考え方が特許の世界でどうして必要かと言えば、特許で守るべきなのは、〝新しい技術〟だからではなく、ビジネスにおいて〝利益を生む技術〟だからです。

ビジネスモデルを考えることで、利益を生む技術が明確になり、その技術を特許で守ることができるからです。
つまり、選択と集中によって利益を得ることができます。

 

たとえば、プリンタ本体で利益を得るのではなく、インクカートリッジで利益を得る、といったようなビジネスモデル等です。

このようなビジネスモデルでは、消耗品そのものを特許でがちがちに守って、利益を確保しているところが多いのです。

 

他人の知的財産権を侵害していない安心を確保する

 

知的財産を活用して利益を出し続けるには、他人に真似されないようにすることも大切ですが、それ以上に、同時に他人の知的財産権を侵害していないことが大切です。

真似された場合には、マーケットのシェアを多少奪われるだけで済むかもしれません。

しかし、他人の知的財産権を侵害すれば、マーケットからの退場を言い渡されてしまいます。

 

他人の知的財産権を侵害していては、折角うまくいっている事業もやめなくてはならなくなってしまいます。

ですから、まず知的財産権を取得しておけば、他に同様の知的財産権がないということのお墨付きを特許庁からもらっているようなものなので、安心して事業を行うことができます。

 

まとめ

 

このように、いざ特許や商標を取ろうと思っても、自社の製品やサービスのどの部分を対象とするかによって、会社の利益に活かせるかどうかが大きく変わってきます。

自分の会社を守るためにも、また、他人の知的財産権を侵害しないためにも、専門家に相談しながらうまく活用していきましょう。

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